チャプター 43

エレナ視点

リチャードの車内は、息が詰まるほどの沈黙に満ちていた。緊張が濃密に、そして苦く舌の上に広がるのを感じるほどだった。彼は固くハンドルを握りしめている。

最初は、胸の中で心臓が激しく打ち鳴り、不安が血管を駆け巡っていた。けれど、一言も交わされないまま数分が過ぎるうちに、奇妙なほどの静けさが私を包み込んだ。

氷のように冷たい彼の視線が、時折こちらに滑ってくるのを刃のように感じた。彼を見なくても、その目が私を射抜いているのは分かった。肌の下で、私の内なる狼が落ち着きなく身じろぎし、彼に挑みたいと思うと同時に、服従したいと願っていた。その相反する衝動に、私は爪が食い込むほど手のひらを握...

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