チャプター 44

エレナ視点

営業部に配属されてからの最初の数時間、私はわざと仕事ができないふりをした。コンピューターシステムの操作にてこずり、分かりきった質問をし、提出した仕事も、そつなくこなせてはいるものの、特筆すべき点はない、というレベルに留めた。何よりも避けたかったのは、目立つことだった。

同僚たちはすでに、訝しげな視線を私に向けていた。どこからともなく現れ、採用プロセスをいくつか飛ばしたように見える新人が、眉をひそめられるのは当然だろう。

昼食の時間までには、私はすっかり平凡な存在として自分を確立させることに成功した。完璧だ。

その戦略が崩れ去ったのは、午後の遅い時間にチャールズが思案顔で私の...

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