チャプター 80

エレナ視点

キャシーの散らかり放題の部屋の真ん中に立ち尽くす私を、喉の奥からせり上がってくるようなパニックが襲った。

原始的な本能が目を覚ます。私は目を閉じ、深く息を吸い込んだ。部屋に混沌と渦巻く匂いの中から、あの子の香りだけを嗅ぎ分ける。

「まだここにいる」確信を込めて私は言った。「あの子の匂いがするわ」

私は慎重に部屋の中を移動し、キャシーの匂いの痕跡を辿った。隅にある大きなマホガニー製の洋服箪笥の近くで、匂いが強くなる。

それに近づくにつれ、心臓が激しく脈打った。

「キャシー?」冷たい木製の扉に手を置き、私は優しく呼びかけた。「ママよ。そこにいるの、いい子だから……?」

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