第196話

エラ

翌朝目覚めると、数週間ぶりに心地よく休めた感覚があった。催眠療法を始めて以来初めて、フィリップが夜中に駆け込んできて悪夢から私を起こす必要がなかった。単に伴侶と繋がれただけで私の精神状態は驚くほど良くなり、愛し合いは夢の中だけだったにもかかわらず、体は満たされ満足していた。

シンクレアに会ったばかりなのに、少しして電話が鳴ると心が躍った。充電器から携帯を取り出す。「おはよう、愛しい人」私は笑顔で挨拶した。

「おはよう、美しい人」彼のハンサムな顔が画面いっぱいに映り、まだ眠そうな表情だった。「気分はどう?」

「千倍も良くなったわ」私は正直に答えた。彼は私を悪夢から救ってくれただけで...

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