第216話

シンクレアがロジャーとコーラを二人きりにした途端、彼女はドアに向かって逃げ出そうとした。二人は儀式について一時間近く話し合ったが、計画を立て終えるやいなや、コーラは逃げ出そうとしたのだ。

しかし、ドアノブに手をかける前に、ロジャーの声が彼女の足を止めた。「ああ、またボクを無視するつもりかい?」

コーラは身を強ばらせ、新たにベータとなった彼の方を振り向いた。「あなたの兄が死んだと思っていた時は同情したわ。でもドミニクが生きていると分かった今、もう取り繕う理由はないわね」彼女は肩をすくめて答えた。あの大きな狼の腕に抱かれた記憶を振り払おうとしながら。もちろん、それは言うほど簡単なことではなかっ...

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