ジャスト・ウォーク・アウェイ

ブレイク

メイドがオフィスの隅にあるテーブルに朝食のトレイを置くと、一礼してそそくさと出て行った。カラフェからは湯気が立ち上り、部屋にはコーヒーの香りが満ちる。俺は立ち上がり、電話を頬と肩の間に挟んだ。

「ただ考えているだけだ、リアム」

弟はかすかにため息をついた。回線が不安定なのか、声に少し雑音が混じる。「本気なのか? なぜ……から手を引くなんて――」

「何からも手を引くつもりはない」俺は自分にコーヒーを一杯注ぐ。ほとんど手をつけたことのない朝食には目もくれない。普段は昼まで何も食べないのだが、厨房はそうは思っていないらしく、構わず送りつけてくる。

「それは退位するってことだぞ、ブ...

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