第11章

栞奈視点

訴訟が終わってから、私の人生は、まるで嘘のように好転し始めた。

集団訴訟の勝利で、私は一千万円の賠償金を手にした。だが、それ以上に大きかったのは、この一件で図らずも得た全国的な知名度だった。メディアは私の物語をこぞって取り上げた。不正に敢然と立ち向かい、家族という名の呪縛から自らを解き放った、再生の象徴として。

堰を切ったように、次々と新しい道が開かれていった。

最初は、新桜大学の看護学部からの電話だった。

「水瀬さん、ぜひ本学の看護学修士課程に、全額奨学金でお迎えしたいのです。あなたのその経験と勇気こそ、私たちが求める学生像そのものです」

次に、青葉総合病院...

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