第6章

栞奈視点

だけど、私が哲也を追い詰める準備をしていた矢先、実家で新たな危機が勃発した。

金曜の夜、私は弁護士との電話会議を終えたばかりで、アパートの部屋で証拠の整理をしていた。テーブルの上には書類や写真が散乱している。その時、鋭く、焦ったようなドアベルの音が突然響いた。

ドアスコープから覗くと、そこに立っていたのは母だった。髪は乱れ、化粧はよれ、泣いていたことが一目でわかった。

ちくしょう、今更なんの用だっていうの……。

一瞬ためらったが、結局はドアを開けてしまった。

「栞奈……」母の声は震えていた。目は赤く腫れ、鼻の頭もピンク色になっている。「あなた……何か、訴訟を起...

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