第9章

栞奈視点

わざと夕暮れ時を選んでレストラン街へと車を走らせた。沈みゆく太陽が通りに金色の光を投げかけていたが、私の心は氷のように冷え切っていた。

遠目にも、レストランの入り口に巨大な赤い閉鎖通知が貼り付けられているのが見えた。数名の制服を着た捜査員が物品を整理しており、書類や機材の入った段ボール箱がトラックに積み込まれていく。

私は通りの向かいにあるコーヒーショップの駐車場に車を停め、車窓から静かにその様子を観察していた。窓から吹き込む夏の風が、わずかな肌寒さを運んでくる。

間もなく、母と仁助の姿が見えた。まるで途方に暮れた犬のようだった。母は泣きながら捜査員の後をついて回り...

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