「ありがとう。」

アィラ

式の始まりまで、もうほとんど時間がなかった。胃の奥をねじ上げるような緊張に、吐き気をこらえるので精いっぱいだ。爪を掌にいっそう深く食い込ませ、鋭い痛みの小さな噛み跡で意識をつなぎとめる――込み上げるむかつき以外の何かに、必死に焦点を合わせようとして。下腹のあたりで子犬がふわりと身じろぎした。私の中で育っている命の、ちいさな合図。けれど今の私には、そのやさしい動きさえも圧倒的に感じられた。私は高く設けられた壇上に背筋を固めて座り、片側には温かく揺るぎないセイン、反対側にはレイヴンがいた。

レイヴンは椅子にだらりともたれ、わざとらしい無関心さで爪をいじっている。ぴったりした革のパンツに...

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