第110章

「ゲホッ!」

 秋山棠花はスピーカーフォンにしていたのだが、藤原光弘の第一声がまさかそんな言葉だとは思いもしなかった。

 彼が言う『分かった』が何を指しているのか、彼女にはもちろん分かっていた。

 要するに、柏木浬と距離を置けということだろう。

 しかし、今はそんなことを彼と議論している場合ではない。もっと重要なやるべきことがあった。

 「藤原光弘、あなたの未来の姑が私の会社で娘を返せって騒いでるの。さっさと来て、この人たちを連れて帰ってちょうだい」

 藤原光弘はまた何かと口実をつけて秋山柔子の居場所を隠すだろうと踏んでいた。

 ところが、彼は少し黙り込んだ後、意外にも素直に承...

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