第123章

 水原春はもう追いかけなかった。断られた顔に浮かぶべき羞恥と憤りは、今や抑えきれない狂喜の興奮に変わっていた。

 やはり、彼女は気づいていなかった。

 光弘兄さんの心の中には、まだ自分がいる。

 秋山棠花が自ら二人の離婚を認め、そして彼も自分の試練を乗り越えてくれた。

 彼が好きなのは、自分だけだと分かっていた。

 そう、水原春こそが秋山柔子なのだ。

 彼女は藤原光弘自らの手で非淵へと送られ、非人道的な苦痛と拷問に耐えた。

 そしてついに、絶好の機会を得てそこを脱出し、さらには自分を助けてくれる黒幕の大物に取り入ったのだ。

 藤原光弘を恨んではいない。

 憎いとすれば、それ...

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