第144章

 端整な顔立ちの男は、仕立ての良いグレーのスーツに身を包み、口元に笑みを湛えながら傍らの女性をエスコートしていた。

 だが、彼に寄り添うその女性は、彼が自ら見立てた淡いブルーのセットアップを脱ぎ捨てていた。代わりに纏っているのは、黒のベアトップドレスだ。

 海藻のように艶やかな黒髪を背に流し、小さく整った顔には、今まさに甘美な笑みが溢れている。

 しかし、その笑顔が向けられているのは彼ではない。

 どこの馬の骨とも知れぬ、野郎に対してだ!

 秋山棠花、よくもやってくれたな。

 俺のそばを離れてどれも経っていないというのに、踵を返した次の瞬間には、別の男と腕を組んでここに現れるとは...

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