第145章

 その答えを聞いても、柏木浬の胸に落胆の影は落ちなかった。むしろ、予想通りの言葉だと言える。

 彼は、秋山棠花という人間をよく理解している。

 彼女がいまだに藤原光弘との関係という泥沼から抜け出せずにいることは百も承知だ。だが、家族にすら祝福されない結婚生活に、どれほどの未来があるというのか。

 彼には、その日が来るのを待つ自信があった。

 彼女が過去を振り切り、新しい誰かをその人生に受け入れる、その時を。

「いいんだ。僕たちの間で謝罪なんて必要ないよ。それに、あれはただのゲームだ。僕だって本気にしてないんだから、君が気に病む必要なんてどこにもない」

 柏木浬の声はどこまでも優し...

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