第273章

 藤原光弘の肯定的な一言により、二人の間の口論はまるで一時停止ボタンが押されたかのように止まった。

 秋山棠花は少し驚いたように顔を上げ、藤原光弘の深く幽玄な瞳と視線がかち合う。それ以上、二人とも言葉を発しようとはしなかった。

 だが、互いの眼差しの中に、求めていた答えを見出していた。

 目の前のこの時間を大切にしたいと願っているのは、彼女だけではない。

 藤原光弘もまた、同じだったのだ。

 秋山棠花は初めて、彼の瞳の中に優しさと期待の色を見た。

 心臓が、トクリと震える。

 たとえ明日目が覚めて、これがすべて夢だったとしても――。

 それでもいい、と彼女は思った。

 最上...

ログインして続きを読む