第277章

 他人事なら捨て置けた。だが、こと秋山棠花と、二人の間に宿った子供が関わるとなれば話は別だ。

 想像するだけで、今すぐにでも水原春を捕らえて八つ裂きにしたいという衝動が、藤原光弘の胸中で暴れ回る。

 棠花と子供。そのどちらか一方でも失えば、俺はきっと狂ってしまう。

 そんな底知れぬ恐怖に苛まれ、光弘は一睡もできなかった。

 やがて空が白み始め、目を覚ました棠花は、枕元に座る光弘の姿に気づく。その瞳は、蕩けるほど優しく彼女を見つめていた。

 彼女は呆気にとられた。

 まだ、いたの?

 昨夜の出来事は、夢じゃなかったんだ。

 目の下に隈を作った男を見て、棠花は驚きを隠せずに問う。...

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