第279章

 藤原光弘は完全に無防備だったため、その一撃をまともに食らってしまった。

 安田延司は元特殊部隊員だ。現役を退いて久しいとはいえ、全力を込めたその拳は重く、藤原光弘を数歩後ずさりさせた。

 だが、今の彼に痛みを気にしている余裕などない。頭の中は、ただひたすらに秋山棠花のことだけで埋め尽くされていた。

 彼は二人の叔父に対し、理を説こうと試みた。しかし、頭に血が上った安田延司に聞く耳などあるはずもなく、雨霰(あめあられ)のように拳が藤原光弘の体に降り注ぐ……。

 殴りながら、延司は悲痛な叫びを上げた。

「貴様が棠花を連れ出さなければ、あの子がこんな目に遭うことはなかったんだ!」

「...

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