第290章

 あの薬を飲まされれば、廃人同様になってしまう。下の世話まで他人の手を借りるような惨めな後半生……想像するだけで、背筋が凍りつくような悪寒が走った。

 死んでも御免だ、そんな生活は。

 改めて見回せば、確かにボロ屋ではある。だが、こうして娘と一緒にいられるのだ。少なくとも安全は保障されている。

 佐藤芳子はすがるように娘の腕を取り、いつここを出られるのかと探りを入れた。

「柔子ちゃん、ママは別に文句を言ってるわけじゃないのよ。ただ、あなたは体が弱いし、何より将来の藤原家の奥様になる身じゃない? こんな場所で苦労し続けるなんて、あってはならないことよ」

「見てごらんなさい、不潔だしジ...

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