第294章

「親父、こっちの仕事はようやく軌道に乗ったばかりなんだ。今のところ離れるわけにはいかないよ。どうしても誰かに頼りたいなら、姉貴の婚約者が適任じゃないか?」

 彼は一人っ子ではない。家には彼を可愛がってくれる姉がいる。ただ、その姉はビジネスに全く興味がないのだが、彼女が選んだ婚約者は根っからの商売人で、頭の回転もすこぶる速い男だった。

 だが、その一言が電話の向こうにいる柏木の父の逆鱗に触れたらしい。怒声が響いてくる。

「この馬鹿息子が! 少し灸を据えられたいようだな。柏木家の家業は代々、直系の息子が継ぐものと決まっておる! どこの馬の骨とも知れん部外者に経営権を渡すなど、言語道断だ!」...

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