第299章

 車が完全に停止すると、秋山棠花はすぐにドアを開けようとした。だがその瞬間、藤原光弘の声が彼女を引き留めた。

「秋山棠花!」

 秋山棠花の指先が止まる。彼女は体をひねり、彼を見やった。

「まだ何か?」

「ああ」

 藤原光弘は短く頷くと、素早くシートベルトを外し、秋山棠花が身構える隙も与えずにその体を抱き寄せた。

 両腕に力を込め、まるで失くした宝物をようやく取り戻したかのように、彼女を強く抱きしめる。

 あまりに突然の親密な挙動に、秋山棠花は事態を飲み込むことさえできなかった。気づけば藤原光弘が覆いかぶさり、彼女は温かく広い胸の中にすっぽりと包み込まれていた。

「藤原光弘……...

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