第304章

 高橋久弥の姿を認めた瞬間、日向琴葉は彼を呪い殺したい衝動に駆られた。

 だが、客の手前、まさか店からつまみ出すわけにもいかない。彼女はとっさに嘘をついてその場を繕うことにした。

「誤解ですわ、お客様。あちらの方は彼女さんの付き添いでいらしたんですが、中で待つのが退屈で、外の空気を吸いに来ただけなんです。決して怪しい者では……」

 琴葉の説明を聞くと、女性客はソファに座る高橋久弥を改めてまじまじと見つめた。

 長身で、しなやかさと均整の取れた体躯。二十代半ばとおぼしき甘いマスクは、まさに有閑マダム好みのイケメンそのものだ。

 見れば見るほど気に入ったのか、客は思わず声を漏らした。

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