第306章

しかし彼は忘れていた。彼女もまた、自分の娘であることを。

その時、扉が控えめにノックされた。

田中さんは秋山棠花の様子を案じて、ずっと部屋の外に控えていたのだ。室内から漏れ聞こえる溜息に居ても立ってもいられず、様子を見に来たのである。

「お嬢様、起きていらっしゃいますか。ホットミルクをお持ちしました」

秋山棠花は、田中さんが自分を心配してくれているのだと察し、扉越しに声をかけた。「ええ、入って。田中さん」

田中さんは入室して扉を閉めると、ベッドに身体を起こした秋山棠花を見て気遣わしげに尋ねた。「眠れませんか。よろしければ、少しお話し相手になりましょうか」

秋山棠花は小さく頷いた。...

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