第310章

 その見慣れた色に、彼は既視感を覚えた。

「奥様、そのハンカチは新しいものでしょうか?」

 藤原光弘に長年仕えてきた高橋久弥は、秋山棠花の習慣を熟知している。彼女は本来、こうした凝った小物を好まないはずだ。

 秋山棠花は、なぜ高橋久弥が唐突に手元のハンカチに注目したのか不思議に思ったが、その眼差しが真剣だったため、素直に手渡した。

「日向琴葉さんからいただいたの。それが何か?」

「日向琴葉……?」

 高橋久弥は、ハンカチの出処を聞いて確信を深めた。

 どうりで見覚えがあるはずだ。これは彼女のものだ。

 高橋久弥がハンカチを広げると、左上の隅に刺繍された模様が目に飛び込んできた...

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