第323章

 ここ数日で、寒さが一段と厳しくなってきた。日向琴葉はわざわざ誰かの手を借りて車椅子で外に出るのを億劫がり、屋内で過ごすのを好むようになっていた。

「日向琴葉、もう他人行儀はやめるって約束したでしょ。『棠花』でも『秋山棠花』でも好きに呼んでいいけど、『秋山さん』だけは禁止!」

 秋山棠花は、日向琴葉のその水臭さがどうにも気に入らない。顔を合わせるたびに、まるで命の恩人か何かのように崇められるのだ。

 歳も近いというのに、最初のうちはともかく、付き合いが長くなるにつれてその余所余所しさが居心地悪くなっていた。

「分かったわ、棠花。ふと忘れちゃって」

 日向琴葉は苦笑しながら弁解した。...

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