第326章

 安田グループ本社ビル。

 安田延司は会議室で、部下たちから今期の総括報告を受けていた。その最中、懐の携帯電話が震えた。

 自宅の警護担当からの着信だ。嫌な予感が走り、彼は即座に電話を取って席を立つ。

「なんだと? 棠花がいなくなっただと!?」

 延司の表情が一変したのを見て、顔色を変えたのは彼だけではなかった。隣席に控えていた副社長の柏木浬もまた、弾かれたように会議室を飛び出していく延司のあとを追った。

 ここ最近、会社の業務に忙殺されていた柏木浬は、秋山棠花と顔を合わせる時間がまったくないまま過ごしていた。彼女は養生のため安田の本邸に戻っていると聞いていたからだ。

 それゆえ...

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