第335章

全身を黒のレザージャケットで包んだその男からは、何にも縛られない飄々とした空気が漂っていた。

秋山棠花の脳裏に、ある人物が浮かぶ。

ずっとネット上だけでやり取りをしてきた友人、アンエイだ。

彼女を「棠花ちゃん」と呼ぶのは彼ぐらいだし、話し方や物事への対処法もどこか似ている。

何より、たった一人で敵地に乗り込み、危険を冒して彼女を救い出してくれたのだ。彼がアンエイであろうとなかろうと、この状況下では彼を信じるという選択しかなかった。

冷たい風が吹き抜ける中、秋山棠花は車内へと身を滑り込ませた。男もそれを見て運転席に乗り込み、ドアを閉める。

暖房の効いた車内で身体が温まってくると、彼...

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