第340章

 豪奢な別荘の一室。秋山柔子はスマートフォンに向かい、ビデオ通話の最中だった。

「私だって、一刻も早くあなたの元へ帰りたいわ。でも任務はあと少しで完了なの。もう少しだけ我慢して待ってて。こっちが片付いたら、すぐに飛んでいってあなたのお側に侍るから……ね、いいでしょ?」

 秋山柔子の声音は、どこまでも妖艶で甘ったるい。報告に現れたボディガードは、うっかりその会話を耳にしてしまい、戦慄して慌てて頭を垂れた。

 柔子はその気配に気づくと、体でスマホの画面を隠し、冷淡に問いかけた。

「何?」

 男は直立不動で答える。

「秋山様、追跡者は撒きました」

 柔子は鼻を鳴らし、得意げに手を振っ...

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