第353章

「玲、その人を通してあげて」

 秋山棠花の声を聞き、佐藤玲は藤原光弘を制止していた手を下ろした。

 藤原光弘は安田家からここまで、ただひたすらに駆け抜けてきたのだろう。秋山棠花の前に立った彼は肩で息をし、その表情は焦燥に満ちていた。

 だが、秋山棠花の凪いだ水面のように何の感情も映さない瞳を見た瞬間、彼の全身を言いようのない恐怖が支配した。

 それは、彼女を永遠に失ってしまうかもしれないという、根源的な恐慌。

 彼は衝動のままに彼女を抱きしめたいという欲求を必死に抑え込み、深く息を吸い込んだ。

「秋山棠花、延司叔父さんから聞いた……」

 ――子供。

 その二文字が、どうしても...

ログインして続きを読む