第360章

 藤原光弘は神妙な面持ちで、指定された席に腰を下ろした。祖父に呼び出された以上、怒号が飛んでくるか、悪くすれば鉄拳制裁が待っていると覚悟を決めていたのだ。

 彼は、そのすべてを受け入れるつもりでいた。

 だが、目の前に置かれたのは、湯気を立てる一椀の茶だった。

「飲んでみな。友人から送られてきた新茶だ」

 藤原当主は、ゆったりとした口調でそう促した。

 立ち昇る熱気を前に、藤原光弘は呆気にとられた。

 あれほど深刻な口ぶりで呼び出しておいて、用件は茶飲み話か。

 とはいえ、祖父の心中は常に読めない。喜怒哀楽を表に出さない古狸だ。こちらから余計な話題を振るべきではないだろう。

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