第369章

 藤原光弘は、空から札束が降ってくるような「美味い話」など決して信じない主義だ。もしそんなものがあるとすれば、それは間違いなく、自分を陥れるために誂えられた罠に過ぎない。

 女性秘書は少し考え込み、もっともらしい理由を口にした。

「もしかすると先方の社長は、今回の提携を通じて名を売り、さらなる市場拡大を狙っているのではないでしょうか?」

「この安市界隈で、藤原家の実力を知らぬ者などおりませんから」

 これまでも、藤原家との提携を無料の広告塔として利用しようとする零細企業は少なくなかった。

 藤原光弘は眉を少し跳ね上げた。

「それもそうか」

 彼はそれ以上、思考を巡らせるのをやめ...

ログインして続きを読む