第372章

「棠花、俺たち何年の付き合いだと思ってるんだ? そんなに水臭いと、本気で怒るぞ?」

 柏木浬はわざと厳格な口調を装ってみせたが、次の瞬間には堪えきれずに表情を崩し、彼女の好物を小皿に取り分けていた。

「俺がしたくてしてることなんだ。これからは、遠慮なんてなしだぞ」

「うん」

 秋山棠花は彼に向かって、ふわりと微笑んだ。

 その笑顔に、柏木浬は思わず見惚れ、つられたように自身の口元にも穏やかな笑みを浮かべる。

 今回こそ、絶対に彼女の手を離さない。

 彼女が藤原光弘との離婚を口にした時から、その決意は固まっていた。

 だが、想いを告げようとした矢先、彼女は藤原光弘の子を身籠って...

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