第373章

藤原光弘は、脱力感に襲われながらソファに深く身を沈めていた。

アルコールが血管を巡り、身体をじりじりと火照らせている。首元のネクタイを乱暴に緩め、ジャケットを脱ごうとしたその時、ポケットの中に何かが触れた。

取り出してみると、あの熊のチャームだった。

月野湾で拾って以来、二度と失くさないようにと、片時も離さず持ち歩いていたものだ。

手のひらに強く握りしめる。その冷ややかな感触が、藤原光弘の脳裏に一瞬の覚醒をもたらした。

ふと、ある記憶が蘇る。

あの日、溺れた自分を救った時の状況について、彼はかつて何度も秋山柔子に詳細を尋ねたことがあった。

彼女は、そのすべてに淀みなく答えてみせ...

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