第376章

 護衛が部屋を出ていくのを見届けてから、秋山棠花はようやく日向琴葉の方へ向き直った。

「……何か?」

 琴葉は呆れたように肩をすくめ、自分の両手を示してみせる。

「マッサージの時間よ。また忘れてたの?」

 此処のところ、棠花は不眠に悩まされていた。琴葉が組織で習得した指圧を施してやると幾分マシになるのだが――。

 今日ばかりは、そんな気分になれないらしい。

「いいわ、琴葉。今日は一人にして。マッサージも結構よ」

「……分かった」

 琴葉はそれ以上踏み込まなかった。棠花の機嫌が優れないのは明白だ。

 彼女が二階へと姿を消すのを見届けると、琴葉は踵を返し、先ほどの護衛を追いかけ...

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