第378章

 藤原光弘はこの店の常連であり、こうした扱いは日常茶飯事だったため、特に気にも留めなかった。

 彼は軽く頷いた。

「そこに置いていけ」

「かしこまりました、藤原様」

 ボーイが恭しく一礼して立ち去る。

 藤原光弘はしばらく待っていたが、秋山柔子が姿を現す気配はなく、次第に手持ち無沙汰を感じ始めた。

 彼は目の前に置かれた、青い光を湛えた新作のカクテルに視線を落とした。興味深げにグラスを持ち上げて香りを嗅ぐと、ライムの爽やかな香気が鼻孔をくすぐる。

 それに混じって幾重もの果実の甘い香りが漂い、最後にアルコールの芳醇な香りが追いかけてきた。

 一口、味見をする。悪くない。

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