第421章

 柏木浬は、それが藤原光弘であることに早くから気づいていた。だが、秋山棠花の手前、気づかないふりをするしかなかった。

 彼が何かを言う暇もなく、手首を秋山棠花に掴まれ、人混みの中へと引っ張られていく。

 ようやく人をかき分けて中へ入ると、そこには衆人環視の中で責め立てられ、反論もできずに立ち尽くす藤原光弘のみじめな姿があった。秋山棠花は危うく吹き出しそうになった。

 なんていい気味なの!

 藤原光弘ともあろう男が、まさかこんな目に遭うなんてね?

 近くの人に事情を尋ね、ようやく事の顛末を理解した。別に彼を助けに来たわけではない。ただ、彼の無様な姿を笑ってやりたかっただけだ。

 子...

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