第459章

 秋山棠花はもう抵抗をやめた。ただ彼女は知りたかったのだ。彼が今呼んだ名は、本当に自分のものだったのか。

 彼の心の中に、私の居場所はあったのか、と。

 藤原光弘の深く暗い瞳には、今、彼女しか映っていない。彼は頭を下げ、彼女に向かって一言一句、噛みしめるように言った。

「行くなと、言っている」

「やっと夢でお前に会えたんだ。そう簡単に放すわけないだろう」

 秋山棠花は呆れると同時に、笑いがこみ上げてきた。

 なんと、彼は彼女の出現を単なる夢だと思い込んでいるらしい。

 ならば、さっきの言葉も本心とは限らない。

 彼はただ、誰かにそばにいて欲しかっただけなのだ。

 先ほど大勢...

ログインして続きを読む