第575章

 「秋山柔子、最後にもう一度だけ言う。ここで騒ぐな」

 その言葉を聞き、秋山柔子はついに完全に心を閉ざした。過去の記憶が脳裏をよぎり、瞳に浮かんでいた絶望は次第に麻痺と虚無へと変わっていく。

 結局のところ、自分はただの道具として利用されていたに過ぎないのだ。

 寵愛も、立場も、すべては偽り。

 警戒心すら捨てて愛した男は、ただ自分を都合よく利用したかっただけなのだと。

 秋山柔子は歯を食いしばって立ち上がり、目の前の男に向かって言い放った。

 「ヤール、この秋山柔子をなんだと思っているの。使い捨ての玩具とでも?」

 「言っておくわ。今この瞬間から、私たちは赤の他人よ!」

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