第634章

「棠花、会いたかったわ! あなたも赤ちゃんも元気にしてた? 早く顔を見せて」

 秋山棠花の姿を認めるや否や、佐藤玲は人混みを掻き分けて一直線に駆け寄り、車から降りたばかりの棠花を抱きとめた。その勢いで、藤原光弘は端へと追いやられた。

 もちろん、わざとである。

 今の彼女には強力な後ろ盾がある。藤原光弘のようなろくでなしなど、少しも怖くはなかった。

 佐藤玲のオーバーな口調と表情に、秋山棠花は思わず、弾き飛ばされた藤原光弘へ申し訳なさそうな視線を向けた。

 考えるまでもなく、玲はまだ光弘を許していないのだ。

 棠花が光弘のプロポーズを承諾した時期、玲はニューアルバムの制作に追われ...

ログインして続きを読む