第654章

 激しい口づけが、燃え上がるような欲望とともに佐藤玲を隙間なく包み込む。唇が這うたびに火の粉が落とされたかのように、彼女の身体と心を熱く焦がしていった。

 まるで大海原を漂う小舟になったかのような感覚。目の前の男にしがみついていなければ、この果てしない欲情の海に溺れてしまいそうだった。

 たまらず、自らその身体を彼の方へとすり寄せる。

 もっと、彼の愛撫を、そのキスを求めて――。

 朦朧とする意識の中、抑えきれない情欲が漏れ出たかのような、微かな吐息が佐藤玲の耳に届く。

「玲、今夜はいくら命乞いしても無駄だぞ……」

 安田延司の身体から伝わる我慢の限界を感じ取ったのか、佐藤玲は潤...

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