第680章

「えっ? もう知ってたの……」

 高橋久弥は今更ながらというように頷き、唾を飲み込んだ。

「前もって話したら、君にプレッシャーをかけるんじゃないかと思って。だから選択権は君に委ねようと考えたんだ。それに、奥様のもとへ行ったほうが、今よりもずっと楽しく過ごせるんじゃないかって……」

 高橋久弥はまるで悪さをした子供のように、自分の考えを一方的に呟いた。

 隠そうとする気配は微塵もなかった。

 日向琴葉は目を丸くして聞いていた。

 彼女はただカマをかけたつもりだったのに、彼が本当にすべてを知っていたなんて。

 しかも、藤原光弘とグルになって彼女に隠していたのだ。

「高橋久弥、あな...

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