第710章

 秋山棠花の真意が、藤原光弘にはどうしても理解できなかった。出産という大仕事において、父親になるはずの自分が彼女のそばに寄り添うべきではないのか。

 他に誰がいるというのか。

 棠花を一人分娩室に残し、自分だけが外でただ待つなんて。そんな状況に置かれれば、彼の緊張と恐怖はかえって増すばかりだろう。

「ダメなものはダメ」

 頬を赤く染めながら、棠花はぴしゃりとはねつけた。

 女が出産する時の姿がいかに見苦しいか、どう説明すれば光弘に伝わるのか彼女には分からなかった。

 万が一、取り乱した姿でも見られようものなら、一生のトラウマになる気がする。

 とにかく、そんな無様な姿だけは彼に...

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