第72章

 バー。

 秋山棠花は自分専用の個室にまっすぐ入ると、テーブルの上には既に彼女が一番好きな強い酒が並べられていた。

 安田家は賭博王からのし上がった一族で、その血筋には生まれつき負けず嫌いの気性が流れている。

 たかが男一人。

 秋山棠花、あなたは安田家で最も可愛がられているお嬢様じゃないの!

 幼い頃から祖父と五人の叔父たちに後継者として育てられたのは、男一人のために心を痛め、自分を苦しめるためじゃない。

 安田家の跡継ぎという身分なら、どんな男だって手に入る。

 藤原光弘に、それほどの価値があるの?

 彼のために心を痛め悲しむなんて、彼にはその資格すらない。

 秋山棠花...

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