第74章

それに、藤原颯は彼女の親友だ。

この件を隠す必要はますますなかった。

ただ、藤原颯はあくまで藤原光弘の兄である。先に釘を刺しておかなければならないこともある。

「義兄さん、まさか離婚するなと説得しに来たわけじゃないでしょうね?」

彼女はもう、藤原光弘への想いを完全に断ち切っていた。

この離婚は、絶対に覆らない。

藤原颯が何かしら言ってくるだろうと思っていたが、電話の向こうからは彼の低い笑い声が聞こえてきた。「随分と連絡を取っていなかったのに、俺が必ず仲裁に来たとでも思ったのか?」

その問い返すような口調は、秋山棠花の考えを否定していた。

「あなたも言ったじゃない...

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