第753章

泥酔していようとも、安田礼が父親の顔に免じて自分の面目を保ち、見逃してくれたのだということくらい、北野拓真には分かっていた。

たかが女の一人。そんなもの、望めばいくらでも手に入る。ここで安田家を本気で怒らせてしまっては、それこそ割に合わない。

だからこそ、立ち去ることを許された瞬間、彼は部屋の隅で縮こまっている女を鋭く睨みつけ、一度も振り返ることなくその場を後にしたのだった。

その様子を見ていた外の野次馬たちも、慌てて蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。瞬く間に、室内はしんと静まり返った。

安田礼は、足の踏み場もないほど荒れ果てた部屋を見渡し、微かに眉をひそめた。だが、まだ室内に一人...

ログインして続きを読む