第797章

 「北野薫!!」

 その名前を耳にした秋山棠花は、瞬時に目を丸くした。聞き間違いではないだろうか。

 内心の驚きもそこそこに、彼女は急いで使用人に客を案内するよう命じた。

 まさか、本当に彼女なのだろうか?

 客はすぐに広間へと通された。目の前に立つ女性の姿を見て、秋山棠花の驚きはさらに深まった。黒のロングコートに黒のパンツ、さらには帽子とマスクで隙間なく全身を覆い隠している。

 先ほど使用人が、時也おじさんを訪ねてきた女性の様子がひどく強張っていると言っていたのも頷ける。誰が見ても怪しむような異様な風体だった。

 「あなたは……」

 秋山棠花が口を開きかけたその時、目の前の人...

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