第798章

秋山棠花はハッと息を呑んだ。

目の前にいる北野薫へ視線を向けると、彼女がその言葉を口にしながら、無意識のうちに左手首をさすっているのに気がついた。そこで棠花は、あることに思い至る。

彼女が全身を隙間なく着込んでいるのは、決して実家からの追手を逃れるためだけではなかったのだ。手首に残る『新しい傷』を、誰の目にも触れさせないためでもあった。

棠花は堪え、この話題で北野薫の言葉を遮るような真似はしなかった。

ただ、彼女が監禁されていた間にどれほどの痛みを味わったのかを想像すると、胸が締め付けられ、やり場のない悲しみが込み上げてくる。

もしこのことを時也おじさんが知ったら、どれほど深く自分...

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