第88章

その考えが浮かんだ途端、秋山棠花はそれを打ち消した。

藤原光弘の実力からすれば、この程度の些事で彼の弁護士団が出張るまでもない。

それに、この件が世間に知れ渡れば、まず耐えられないのは彼女の方だ。

彼は気にしないかもしれないが、彼女には面子というものがある。

つまるところ、自分が揺らぎやすすぎただけだ。藤原光弘の言ったことには一つだけ正しい点があった。昨夜の後半、彼女は確かに彼に煽られて足腰が立たなくなり、あれこれと体位を変えさせられ……。

ため息をついたその時、山田蓮花がスープを秋山棠花の目の前に差し出してきた。彼女は無意識にそれを手で遮る。

「結構です。お気持ちだ...

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