第90章

「ないわよ。あなたに隠し事なんてするものですか。考えすぎよ」

秋山棠花は頑として認めない。

佐藤玲は眉をくいっと上げ、すぐには追及せず、代わりに手の中のチケットをひらひらと振った。「さ、検札の時間よ。まずは中に入りましょ」

棠花が自分に見られたくない痕跡って、まさかあの男と関係があるのかしら?

道理であの日、棠花がやけに早く帰ったわけだ。

入場する前、秋山棠花は隣にいる佐藤玲がいつもと違うことに気づいた。普段、遊びに出かける時も化粧はするが、それは自分の好きなようにする濃いメイクだ。

しかし今夜の佐藤玲は、まるで何かの仕事に向かうかのように、メイクは精巧で、服装も彼女...

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