第91章

「玲、友達なんだから、紹介してくれないか。僕も一度ご挨拶したいんだ」

夏川峰は心の底からそう言った。同じ業界でしのぎを削る者として、出世したくない者などいない。

この世界に入れるだけの力はある。足りないのは、ほんの少しの運だけなのだ。

佐藤玲と夏川峰はデビュー当時からの知り合いだった。一人は契約したばかりの新人歌手、もう一人は誰よりも努力家の練習生。

ここ数年、彼が代表作もなく日々苦悩しているのを見て、秋山棠花も手を貸してやりたいと思っていた。

だが、彼女が秋山棠花に代わって決めることはできない。

言っておくべきことは、先に言わなければならない。「紹介してあげることは...

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