第94章

 目の前のこの優男を見て、藤原光弘は腹の底から怒りがこみ上げてきた。

 この男が自分より格好いいとでもいうのか、秋山棠花はいったい彼のどこを気に入ったんだ?

 女の機嫌を取るのがうまいのか、それとも彼女を笑わせるのがうまいのか。

 先ほど彼女がこの男に向けて楽しそうに笑っていたのを思い出すと、藤原光弘は思わず汚い言葉を心の中で吐き捨てた。なぜだ?

 結婚して三年、彼女は一度も自分にあんな笑みを向けたことはなかった。

 夏川峰は問いかけられ一瞬呆然としたが、秋山棠花に目を向けると、その瞳にはあふれんばかりの思慕の念が宿っていた。

 そして、きわめて固い意志で答えた。

「俺は秋山さ...

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